冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

おはよう世界

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息して

つらいことがあると、決まって人の波の中に抗うようにして体をねじ込ませてズイズイと自ら飲まれるのが私の癖。

そのときにすれ違う、わたしより背が高い男の人たちは、みんな疲れた顔をしていて、目の下にハッキリと見える形でそれがまるで美徳かのように疲れを刻み込んでいる。

7月はとっても気温が高かったり、なのに突然雨が降ったりと、神様もメンタルが不調になるのか、ひどく不安定で、そのせいでひどい湿気と低気圧に苦しめられる。だいたいこの季節は、喘息に悩まされる。息を吸うと、喉の奥あたりに湿気た空気がペッタリと膜を作るかのようにわたしの喉に張り付いては呼吸するなと言ってくる。わたしの本能が空気を求めて咳を促して、何度もせき込んで、あまりの苦しさに、肩のあたりから熱が上がって来て、頭が沸騰したかのように熱くなって、その熱のせいで眩暈引き起こし冷や汗が体を不快に冷やす。咳が止まる頃には、涙とよだれとでもうよくわからない状態だった。

雑踏を行く人々たちはだいたい、加齢臭とかいう社会人の香水を纏っていて、わたしは現実から目も鼻も背けるようにして波を泳いでいく。

人ごみで疲れた後は、家に帰って普通の時間を過ごして異常に寝る。

夢の中で毎日誰かに会う。それはだいたい、私のことを大事だと言ってくれた人たちで、人たちの波の中でわたしの存在に気づいて、振り向く。夢の中で、その人たちは私に向かって「大嫌い」と一言。表情は憎悪に満ちている。わたしは聞きなれてしまったその言葉になすがままに「ああ、ああ」と頷いて雑踏に目をやる。すると、雑踏だった人たちが急に『友達』に姿かたちを変えて、同じように「嫌い、大っ嫌い」と、遅刻してはいけない電車の時刻表を確認するかのようにつぶやく。わたしは聞きなれてしまったその言葉になすがままになって「ああ、ああ」と頷いて空を見る。「空、綺麗」とインスタグラムでよく見かける腐ったセリフを放つと、空は私のことなんか知らんぷりで雨を降らすのに必死そうだった。

ぱち

っと目覚めて、夢でした様に、すがるようにして私はもう一度空を見た。

「忙しいんだよ、バカ」と、空は言った。

「空、綺麗」と、わたしは目尻に雨水をためながら言った。

人間様に構ってられるかってんだ。その精神が。