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冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

ある優しき殺人者の記録 感想

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本編のほとんどをひとつの部屋で撮影した、と宣伝文句にあるように、低予算で作られたことがあからさまにわかる本作品。
今月見た、ホドロフスキーの『リアリティのダンス』の次に面白かった。

何が面白いかったというと、演出面である。POV法で撮られている作品で、わたしは画面酔いするから結構苦手だけどそれがあってこそ、の映画だった。

話の全体の流れ自体が面白い、というわけじゃない。
それは、本編のほとんどを同じ部屋で撮影してるからという宣伝煽り文からも伝わるように、スケール自体は非常に小規模で、登場人物もほぼ四人とかなり少人数なことが物語っている通り。
しかし、少人数だからこそなのだろうか、四人という少人数で行われる掛け合いには、観客を引き付ける魅力があった。
耳にしたことがある人は多いのではないだろうか、

北九州監禁殺人事件 - Wikipedia

日本で実際に起きた事件の『北九州監禁殺人事件』を彷彿させるやり取りが行われた。これでほとんどネタバレになってしまうが、あの事件に関する記事を読んだことがある人は読んでいるだけで身の毛もよだつような感覚に襲われたはず。もちろん、わたしも同じで、はじめて読んだときは事件内容の事実を淡々と述べたニュース記事以上のおぞましい出来事が実際に起きていたかと思うと本当にゾッとしてしまった。
あのような内容のやり取りが映画のなかでは目に見える形で行われる。

殺人者である人物は統合失調を思わせる言動(神様の声が聞こえる、殺さなきゃと言われる、など)を繰り返し主張をする。そんな殺人者(ジャーナリストの
女性と知り合い?冒頭の部分見てなかった)のもとを訪れたジャーナリストの男女の二人組は、脅迫され事件の真実に強制的に迫ることになる。

真実の一部だとして、殺人者が彼らに見せたビデオのなかには楽しそうに遊ぶ、ジャーナリストの女性と殺人者と二人の友達との過去の姿があった。小学生位だろうか、道路でビデオカメラをもって遊んでいた次の瞬間ら二人の友達である子が車に撥ね飛ばされる。そこでビデオは止まった。なぜこれを見せたの、と問うと殺人者はこう答える。
「自分はあの事故で死んでしまった彼女を救うために25人殺した、神によると、あと二人殺せば、今まで殺された25人もあの事故で死んでしまった彼女も甦らすことができる、この奇跡を俺は起こす」

呆れるジャーナリストたち。しかし包丁を向けられてしまったからには抵抗できず、殺人者の『奇跡』をビデオに録画し映画にしてほしいと頼まれる。そしたら今まで自分をキチガイだと扱ってきた人にたいして一矢報いることができるからだと。

震えて、もはやドキュメンタリーとして収録することを忘れカメラ構えるカメラマンの緊張感。カメラのぶれ方は観客にダイレクトに恐怖を伝えてくる。ドキュメンタリーであるがゆえにBGMなど一切なし。しかしズーンと唸るような音が感情の起伏にあわせて歪んだり、静まったり、後半になると徐々に歪みが酷くなったりとこれもまた恐ろしいと思った。あの演出は、見ているわたしたちがかれらのように狂ってしまったからなのか。

「日本人が二人来る、彼らは愛し合っていて首に痣がある。僕が彼らを殺せば完結する」

と、殺人者はカメラに向かって話した。殺人者の予言通り、二人の日本人カップルが部屋にやってきた。そこで死闘が繰り広げられることも知らずに。

細かいやり取りまで、説明してしまうと面白くないので割愛するが、ジャーナリスト達の、自分たちの立場を忘れていく様は恐ろしかった。暴力と死に慣れ、瞬時の判断が求められた故にか、映画後半では殺人者と同じように犯罪に手を染めてしまった。

27全員死んで(誰が死んだかは内緒)奇跡が起こる。

そして映画は結末を迎える。みんなよみがえって、三人で仲良く遊ぶ結末を。映画のようなハッピーエンドだ。彼が望んだ奇跡の結末を迎える。地面に転がったビデオテープは雑音を響かせながら砂嵐画面になり、途切れる。壊れたビデオテープは2014年の年月を指していた。しかし、誰かが気付くこともなく壊れたビデオテープは路上に放置される。

 

感想としては、掛け合いが非常にうまかった。狂気にのまれていく人間の恐ろしさがぶれたり、ゆれたりするカメラから情報として伝わってくる。役者の演技は殺人者の役の方以外全員棒、といった感じ。そこがまたB級映画臭を強くしているが、リアリティがあり、観客を引き付ける会話の展開に魅せられる映画だった。