冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

5:38:22

あたしはこの時間帯が苦手だ。
朝のこの時間は深夜に近い、人を殺す静寂がある。
鳥の鳴き声を静かに待っている闇が、闇以外の何かに縋ろうとする弱さを持った時間帯がとても苦手だ。
遠くから、自動車の音と、電車の音が風に運ばれてやってくる。始発に乗る人々の表情は険しかったり、なにかに期待する顔だったりする。オールからの帰りで疲れた顔かな、好きな人の家から帰る顔かな、ディズニーランドに行く顔かな、すぐにわかる、化粧の崩れ方で。

自ら音を発しない夜明け前は、新聞配達の音にも音を求める。
静寂の中に、ブロロロロロ…と家の周りを周回する同じ音。体にまとわりついてくるタチの悪いハエのようだ。
すべてが夜明けを伝えようとしてくる。すべてが朝を伝えてくる。

人を殺す静寂と、朝の冷たさは、冬の独特の空気感だ。その二つは特に苦手で、寒さと寒さが生む寂しさを毛布で紛らしながら、静かに鳥の声を待つしかないのだ。
やがて朝が来ることを信じてこの時間を生き抜け。