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冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

映画『箪笥』を思い出した


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人が一生かかって背負っていくべき、目を向けていくべき苦痛を、さらりと描写した映画が好きなので、久々に『箪笥』をみたいと思った。

『箪笥』は韓国の古典である『薔花紅連伝』をもとに作られた作品らしい……(読んだことがないので映画がどれくらい原作に寄り添っているのかわからない)角川ホラー文庫から出ている『姉妹』とマンガ版も一応読んだ。(あんまり内容を覚えてない)
 
あと、フライヤーが結構有名な気がする。パロディで日本の映画作品や洋画やら色々出てくる。わたしも『箪笥』に触れるきっかけとなったのは、このフライヤーだった。
手前二人が、姉妹の女の子達で、左側に座っているぐったりした子が妹のスヨン。右に座る、儚げながらも、しっかりした印象を持たせる子が姉のスミだ。
家族写真を思わせる配置で、血液の付着した真っ白なワンピース、手を繋いでいる姉妹、不自然なほどの完璧な笑顔を浮かべる母親と、気難しそうな雰囲気を持つ父親
パッと見で、情報量が多くて、キャラクター同士の繋がりや個性がかなりはっきりとわかる良いデザインだと思った。
 
作品のなかで一番演技がうまかったのは母親のウンジュ。顔立ちも、いかにもプライドの高そうな母親で、神経質に姉妹たちに接している。
 
ラストシーンの種明かし部分が、若干雑、というかあからさますぎでは……とおもうところあるが、衣装や美術がとにかく可愛らしく、メインテーマが印象的なワルツ調の曲なので何度も見返したくなる。
(サウンドトラックにはメインテーマのボーカル版も入っていました。歌詞はもちろん、韓国語ですが英訳も隣に表記されていたので、内容理解には問題ないと思われます。)
撮影現場となった館は実際に幽霊の目撃情報が何度もあるような場所だそう。しかし、特典映像のインタビューでは、そういった現象は一切起きなかったとか。
 
以下ネタバレを含む感想

 この映画は実は、殆ど幽霊が出てきません。

恐らく、親戚?の人を招いて食事会をした時に現れたのだけ。なので、厳密にはホラー映画のジャンルではないと思うのですが。

スミがひどく精神を病んでいるのは、冒頭の精神病院での精神科医とのやり取りを鑑賞後に思い出せば気付けます。フライヤーの真っ白なワンピースは、精神病院で着ていた服なのでしょうか。

この映画の登場人物は父親とスミの二人だけで、スヨンとウンジュはスミの妄想の存在です。その証拠に、ウンジュは何度も食事の際や何かにつけてに精神薬を口にしています。

父親はスミの病気の事をどこか諦めている雰囲気を出して彼女に接していて、スミは父親への、異性としての感情が見え隠れして、過去の出来事を引き摺り、精神を病みながらこれから先、不毛なやり取りを繰り返しながら生きていくのかと思われます。

父親は、親としての責任を果たし、スミと長い長い時間を共有して、彼女の作る家族ごっこに永遠と付き合わされる。一つの悲劇が、スミの中にたくさんの人を作り出し、狂わせてしまうほどの、深く重い呪いは、霊の引き起こす現象よりもずっと恐ろしいものなのではないでしょうか。