冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

インターネットのうた

インターネットがまだ無い時代
君をいじめた人たちには、みんな友達がいた

暴力やゲームや会話に至るまで、いろんな事に磨きをかけて必死に作った繋がりを使って君をいじめて苦しめた
君は一人でしくしく泣く、さめざめと泣く
誰も君の主張や文句を聞いてくれない
君には味方がいなかった
君には誰かを自分の周りに留めておける能力が無かったから

インターネットに溺れてからは、君の能力を知らなくても、君の発言は、君以外の誰かの発言として認められるから、君のものじゃなくなるから、匿名だから、すごく楽に響いて、みんなが君の発言を見ていて、評価してくれる

君がかわいくなかったり、君が優しくなかったり、君が勉強ができなくて、君に趣味がなくて、君に人と会話をする能力が欠けていても、そんなことお構いなしに
インターネットで君は悪くない、悪くないのに、評価されたくて、君は君であろうとしたくて、君が君だって気付いてほしくて、自分である苦しみを自分で捨てて手離したのに、どこかで今日も『わたし』であることを望んでる

『わたし』であることが必要とされない世界で溺れている
きみは、ひどいことや過激なことを言って、インターネットがなかったら近付けなかった人に勝手に近付いたつもりになって、ここは海だから、繋がっているつもりになって、自由だと勘違いして、簡単に届くから、傷付く人を見て、ああ自分の声は届くんだ、と思い込んでしまう

インターネットに繋がるための電源を気ったら、オフにしたら君のインターネットを介して得た人間関係は殆ど脆く、消えてしまうのに
もう遅いよ

あの可愛いピアニストの女の子に
あの綺麗なモデルさんに
あの頭の良い大学に通ってる子に
テレビに出てる有名な学者に
売れている作家に 
同じ空間にいれるだけの努力をしてこなかったのに
溺れて息継ぎも知らない君は、すぐに、今すぐに!と、もがいている

最初に自分を放り投げてそこに飛び込んで、気持ちよく泳ぐことを選んだのは他の誰でもない君なのに

誰のせいでもない
もうずっと暗い海
底もない
せめて自分の体を千切って可愛がる事しか
ここではやることがないんだよ