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『君の名は。』感想

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 ちょっと時間がたってしまったけど、メモ程度の感想を残しておきます。

わたしが観賞したことのある新海誠作品は、『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』、『言の葉の庭』のみで正直そんなに詳しくないです……。『星を追うこども』は挿入歌かテーマソングが結構好きだった覚えがあるのにもかかわらず未だに見れていない。

 とくに気に入っているのは、代表作とも称される『秒速5センチメートル』です。オタクなので。

 

 

 秒速の好きなポイントは、学生時代の初恋を、空白の期間があったのにもかかわらず、主人公がずっと一方的なまでに引き摺っているところ。あと、あのオチ。見事にオタクに寄り添っていない終わり方。そこで結ばれちゃったら、本当にご都合主義だと感じてしまうところで、苦い恋愛に落とし込めて本編が終わります。しかし、昔好きだった人は、今僕の事を覚えていたり、うんぬんって、そういうことを想像するのは、けっこうよくあると思うので、わかる!切ない!って同じように思った人は多いんじゃないでしょうか。

 

 よく考えると、新海さんの作品での舞台や背景がきれいだったりするから、なんか良い雰囲気、センチメンタルな思い出、映像、美しい話……ととれてしまうだけで、実際、わたしたちはアニメ顔でもなければ、あんな幻想的な風景に住んでいるわけでもないので、現実で、あの主人公くんのように物を見ることは許されていないと思います。そういった意味で、初恋にいつまでもしがみついてる人はあまりいないのかと、どこかで理解しているはずです。だから、作中で、気持ち悪くない初恋の、純粋にきれいな部分だけをうまく抽出して、映像化できているところが好きでした。

 

 この、気持ち悪さが本来伴う感情のきれいなところだけを、良いとこどりしている作風は『言の葉の庭』でも同じなような気がします。オチは秒速と打って変わって、ハッピーエンドだったり、主人公が教師にいつのまにか惚れていて、実はお話自体はそこまで好きではないです。展開が早い、好きになるのが早い。すぐ好きになっちゃう。それでも、秦基博さんが歌うエンディングテーマの『rain』は、雨上がりの爽やかさがあって今でもよく再生しているお気に入り曲だったり。

 

 といった印象(マイナスなのかプラスなのか複雑さがあるもの)ばかり持ってしまって、新作の『君の名は。』を鑑賞。

 やっぱり秒速が好きだった自分としては、ご都合主義なところにやっぱりウーンとなってしまう。尺も事前に調べてみると結構な長さがあったので、キラキラな世界にあてられ、体力が持つかどうか心配でした。オタクなので。

 

 長い尺の中で、特に一番盛り上がったなあ、と感じたのが、入れ替わり生活が始まり、お互いの体にメモったり、ブログをつけていって、挿入歌入る流れ。ここは一気に引き込まれました。しかし、テンポの良さを感じたところで、バイト先の先輩とのデートを三葉ちゃんが取り付け、その後に入れ替わりが起きて、三葉ちゃんが鏡を見て泣いている自分に気づく、ここでなぜか突然主人公への恋心がはっきりと描写されます。

 瀧くんも瀧くんで、美少女のおっぱい揉み放題だったし、年頃の男の子がそれでドキドキしないわけもないだろうし(先輩に対してはあんなに奥手だったのにいざ入れ替われるようになってすぐにおっぱい揉み始めるし。ギャグなんだろうけど、ここだけ妙にリアルな下心で若干引いた。)、そういったこともあって、顔がよく、女子力も高いハイスペックなそうどこにでもいなさそうな三葉ちゃんを好きになるのは当然の流れであると思う。

 それでも、唐突な展開に、え!?なんで!?と一瞬パニックになって、そのあとはもう、掌にペンで「好きだ。」とか渋いことを書いてしまう始末。さすがに寒い。というか、名前を忘れてしまうってわかってるのなら即座にメモれよ!就活で死ぬぞ!と一人でツッコミを入れていたら、エンディング直前で就活がうまくいっていない主人公が描かれてかなり笑ってしまった。

 

 前半であれだけお互いがどこの誰であるかという情報を共有できるように工夫したのに、後半で全く活かされていない。悲しい。そしてあたかも秒速のオチを再現しているかのような展開、しかしハッピーエンドにガックリきてしまいました。そもそも日常生活で「名」ってあんまり会話で使わないから違和感がすごい。「あなたの名はなんですか?」と人に尋ねないし。「名前はなんですか」ならシックリくるけど。「彼の名は?」って言わないから余計にしっくりこない。your nameにすると違和感が払拭されるが日本語だと畏まり過ぎている。

 

 良かったところは大衆にうける話づくりができていたところだと思います。あと前半のテンポの良さなど。文句ばかりつらつら述べてしまいましたが、苦手だったポイントが秒速でよかった点なので、全く関係のない作品としてみたら、つまらない作品ではないと思います。

 しかし、今後、秒速のような作品を作ると、ここで得たファンから批判されそうで、もうあの切なさは帰ってこないのかと思うと、これまたホントに秒速でわたしたちがあのオチで感じた感情くらい切ないですね。新海さんは、もうどこか違う世界で、過去との決別をして新しい世界で生きてるのかと思います。

 ああ、好きだったんだなあ、新海誠。わたしにも秒速の主人公くんと同じような気持ち悪さが芽生えた瞬間でした。オタクだ。