ノクターナルアニマルズ 感想

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ちょっと前に観てメモするのを忘れていたので思ったことをいくつか、あげてみます。

待ちに待ったトムフォード監督の新作ということで楽しみにしていました。

というのも、

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私は彼の『シングルマン』という映画の大ファンだったからです。

この作品で、彼は初めてメガホンを取ったわけなのですが、元々デザイナーということもあり、洗練された映像美にただただ圧倒されます。

色のバランス、体を美しく魅せる為の衣装であったり、坦々としながらもどこか情熱的に感じるシーン音楽であったり、主人公ジョージの家の内装、肉体美、目、コントラスト......好きなポイントを挙げていくとキリがないくらい、私にとってこの映画は本当に完璧に近い作品だと今でも思っています。

と、このままシングルマンについてつらつら書くとシングルマンについての記事になってしまうのでノクターナルアニマルズについてさらりと書いていきます。

まず、シングルマンと同様、映像美は迫力満点でした。

洗練されすぎてて感想述べるのも蛇足に感じてしまうけど、誤解している点があるかもしれないということを前提でいろいろ言うと、ストーリー自体は元カレからの復讐劇です。その復讐方法も直接的ではないのにも関わらず、残酷そのもの。

 

(以下ネタバレあり)

 

  • ストーリー

スーザン(ヒロイン)は裕福を愛する母親を持つバリバリのキャリアウーマン。学生時代は芸術家としての道を考えたりもしたけど、世間体やお金のことを気にして芸術家の道をスッパリ諦め、現在は美術ギャラリーのオーナーをしている。同じく裕福な旦那と娘もいて申し分ない生活を送れているが、旦那は浮気をして帰ってこないわ、不眠症に悩まされるわで中々散々な状況である。

そんなある時、元カレのエドワードから一冊の本が送られてくる。タイトルは『ノクターナルアニマルズ(夜の獣たち)』。スーザンは眠れない夜を過ごしながら、その本を毎晩、少しずつ読み進めていく。ストーリーは、旅の道中で家族がギャングに襲われ、夫が逃げ出し、その間に妻と娘がレイプされて殺されてしまう。その後、夫はギャングたちを一人残らず見つけ出し、正義を盾に彼らを殺して復讐する、といったものだった。

本を読み進めるうちにスーザンは『ノクターナルアニマルズ』のストーリーが、自身とエドワード、彼との間に存在したかもしれない子供に起きた恐ろしい出来事のように思え、恐怖を感じながらも、同時にエドワードの才能に惹きつけられていく。小説の中のエドワードは、スーザンが「あなたは精神が薄弱過ぎる」と形容して振ったように軟弱な男として描かれており、ギャングに怯えて妻と子供を置いて一人逃げてしまう様な男だ。状況が状況だから仕方なかったのかもしれないが、ゴミ捨て場のソファに無残放り投げられた全裸の二人の死体を見て、エドワードは復讐を決意する。そして、一人の正義感の強い刑事を味方につけ、無事復讐を成し遂げるが、復讐の際に深手を負って死んでしまう。

スーザンは、『ノクターナルアニマルズ』を読んでエドワードの才能を確信し、セクシーなドレスを身に纏い彼をディナーに誘うが、いつまで経っても彼は現れなかった。

  • 感想

エドワードはヤバい男なので別れてオッケーでしょ!!!!!スーザンの母は、一見金と権力に弱い女のように見えるけど、ある意味でエドワードの弱さを完全に見抜いている。『ノクターナルアニマルズ』を読んで、そもそもこんな小説書くやつとまともに人生上手くやっていけるとは思えないでしょ、って一蹴できるならまだしも、スーザンも元々は芸術家の卵だったのでどうしても才能の方に惹かれる一面がある。うわーダメなやつだ。どちらにせよこの二人はずぶずぶになる相性だと思うし別れて正解だと思うけどな。浮気する旦那も最悪だけど。小説の中で、堕胎した自分とスーザンの娘をギャングにレイプさせて殺すとか悪質にも程があるわ。サイコパスかな。妻と娘を殺されて復讐の鬼になるのはわかるけど、小説の中で正義についてつらつら述べているのにヤバい本送る自分の正義感はどう思っているのかわからんがとにかく陰湿過ぎるので精神薄弱さが手に取れちゃっている。(本としても)「失ったものは二度と戻らない」と別れ際にスーザンに言い放ったエドワードの言う通り、エドワードはスーザンに期待させるだけさせといて、捨てる。芸術家としての才能や執着でスーザンに復讐っていう華麗な復讐劇でもあるけど陰湿だ。スーザンもスーザンで、悩みに悩んで選んだ別れだと思うし、そこらへんも小説家になりたいなら他者の気持ちを推しはかってやればいいのに、エドワードも自分の感情でいっぱいいっぱいで余裕が無かったのかな。一見、スーザンがクソ女に見えるけど、エドワードもダメ男なのでしょうもない。やっぱりこの二人はうまくいかないだろ、と誰が見ても思うんじゃないかな。個人的にはスーザンがどれだけ魅力的か、エドワードの視点でも知りたかったりするので原作も読みたいなって思いました。映画はスーザンの視点で進んでいくので、スーザンが小説の中のキャラクターに自分を重ねて、観客はスーザンに自分を重ねて、というストーリーの追い方が出来上がっているし、エドワードのことがよくわからずに終わるのがいいのかもしれない。

音楽は『シングルマン』の曲調とほぼ変わらないので、聞いたことがあるようなメロディだった。新鮮さはないけれど、シーンにぴったり合っている。OPのダンスのくだりはすっっっごい好きです。

あと、ギャングもやたらセクシーな肉体で、お風呂で泣くエドワードの身体も憂を帯びた表情も相俟って妙に色っぽく描かれていて、前作同様とにかく肉体が美しい。トムフォードはある意味で人間の感情にしか興味ないんだろうな。