冷静と失禁のあいだ

死ぬまで踊り続けるマグロさんの話

金魚

幼心を思考の水路の中で遊ばせてみ

る。

あっちへ行けよ、こっちへ来いよ、まるで水槽の金魚だ。鱗を爪でつつくと反対側へ、またその反対側へとうろちょろさせるように、ちょっとした刺激にも敏感だ。

猫を撫でる気持ちで他人の心を撫でる。

しかし、猫を撫でる気持ちで自分の心を撫でることはできない。

むかし、教室で飼っていた金魚の鱗が一枚、また一枚と、ぽろぽろ水槽の底に落ちていく様子をみて、吐き気が込み上げるほど不気味に思えた。

鱗が剥がれ落ちるのはストレスが原因らしいよ、ふうん、とりあえず鱗が剥がれていくことらしい、ストレスってなんだろう、金魚じゃないからわからないや、こいつ、ただ泳いで飯食って糞をしているだけなのにストレスっていうやつで鱗を剝がして、水槽を汚しているなんてね、なんて御身分だ。

それでも私たちは金魚を撫でる。

あの金魚は数日後に死んだ。

水槽を洗う手間が省けたそうだよ。