体も頭も糸で地面に繋がれて逆さまの操り人形になったような気分の憂鬱が続いている。高校のときから、憂鬱が極まると蟲の幻覚を見る。はじめは細かい毛を生やした黒い蜘蛛だった。電車の中でふい髪をいじった時、手に違和感を感じ、それを掴むと、蜘蛛だった。手のひらにざらつく細かい毛に驚き咄嗟に払いのけたが、蜘蛛の姿はどこにもなかった。それ以降、疲れを感じたり冷や汗をかく思いをして不安になって自分の体を触ると、自分の黒くてゴワゴワとした細かい毛を持った蟲に触れる感覚があった。蟲は突然視界に入って、掴むとどこかへ消えてしまう。掴みどころのない不安そのもののようで、本当に怖い。