『天気の子』感想

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天気の子を見ました。

新海誠といえば、私にとっては、昔好きだった人に異常なまでに執着するピュアな男心(世間では童貞心と言う)を映像美で美化してくれる『秒速5センチメートルで、真っ昼間の新宿御苑で雨に濡れた大人の女性のセクシーな裸足にドキッとする『言の葉の庭でした。

 

3年前くらいに公開された前作『君の名は。』では、今までの作品とは打って変わって、音楽がちょっと病んだ10代に馴染み深いRADWIMPSになったり、新海節独特のモノローグがいつもより減ったり、若者をターゲットにしているかのようなテンポの良さがあったりで、全体の調和が取れており、結果、大衆に大ヒットしましたよね。

今作は、私の好きだった新海誠の要素を取り入れつつ、それを大衆に向けて作ったような内容でした。辻褄が合わなかったり、千と千尋のパロディみたいなシーンがあったかと思えば線路を走りだしたり、雨で沈んだ東京でどうやって作物とか経済回したんだよ!とか、おっぱいハイウェイなお姉さんや、様々な要素を整理することなく詰め込んだ本作。ツッコミどころ満載ですが、「前作より良かった」「前作よりクソだった」そんなことを客にわざと言わせるようにあえて作っているのではないだろうか……。新海誠恐ろしい子……。

 私は、新海監督のそういういたずらっぽさというか、攻撃的な人を試すような姿勢が好き、という個人的な理由で今作は前作よりはちゃめちゃ好きです。

 

 物語は、歌舞伎町の汚い東京から始まります。

『君の名は』で描かれたようなキラキラした東京というのは一切出てきません。
田舎の少女、三葉が夢見た、瀧くんが送る生活のような東京の姿とは真逆の、東京の闇だけが描かれてます。攻撃的だね!!!※しかも協賛企業の出演の仕方が完全に汚い闇の側面として登場したのがまた皮肉きいてて良かったです。怒られなかったのかな。


主人公は、家族とも友達ともうまく行ってないわけでもないがとりあえず東京に憧れてやってきて、仕事を探して、偶然、拳銃拾って、最終的にオカルト雑誌のライターというバイトにたどり着きます。そこで売れないライターのおじさん、須賀さんに再会します。須賀さんもまたこじれた人で、半分大人で、半分くらいまだ子供っぽさがるというか、青臭いです。主人公にも新海さん本人っぽい要素あったけど、ちょっとこのキャラクターにもその要素を感じます……。

 

貧乏生活の主人公はマクドナルドでぼーっと過ごし、yahoo知恵袋で質問して(この発想も非常に10代っぽくて好き)、インターネットの陰湿な説教オタクに意地悪な現実を諭されて、ちょっと不機嫌になる。

そんな風に時間を潰していたある日、マクドナルドでバイトする女の子にビッグマックを奢ってもらいます。主人公はそれを食べながら「僕の16年の人生で、これが間違いなく、一番おいしい食事だった」と思います。

ここがまた10代っぽくて良いです。この年頃ってなぜか、今まで一番とか、人生で一番とか、やたらと言いたがる年頃だと思うんです。そんなわけないだろ!と思いつつも、このモノローグの表現には納得する自分もいました。

この価値観は、須賀さんの「16?17?18?大して変わんねえじゃん」というセリフからも読み取れます。10代にとっての1歳差の大きさ(一学年上の先輩って怖くないですか?私は上下関係が厳しい学校だったので、怖かったです)が、大人の立場の須賀からは理解できないものであることがわかります。

究極のところ、主人公とヒロインの帆高と陽菜の関係にも言えるのではないでしょうか。

どうしたって、大人の価値観で考えると、こんな短期間で出会った人に対して「好きだ」や「あなたがいればいい」的な発想には至らないはずです。

 

けど10代は違う。

 

10代で出会った好きな人で恋愛の価値観がこじれたり、価値観が歪んだり、なんてざらだと思います。この点には共感できる人もいるのではないでしょうか。やたら大人びようとして、あって間もない異性に永遠の愛を誓ってみたり、「愛してる」と口走ったりするものです。そんなんありえねえだろ!と思わずツッコミを入れたくなるのは、我々が冷静さを現実で嫌々身に付けた、大人になってしまったからです……。

 

須賀さんは幸い?半分くらい帆高君に共感できる子供っぽさと、現実にボコボコにされてきた(例えば彼の娘の件とかそうだと思う)オトナな側面を持ち合わせているので、「もう大人になれよ、少年」と帆高君に厳しい一言を言ってみては、ちょっと助けてあげたり、何かと情緒不安定な行動を取ります。

須賀さんにはその中途半端さに終始イライラしたんですけど、子供と大人の側面のゆらぎが妙に生々しくて描かれていたように思えました。

 

映画の途中、ファンサービスのように前作のキャラクターの三葉ちゃんと瀧くんが登場しましたが、あれは最高の皮肉な気がしました。

前作のキャラクターが登場することで、前作で新海さんが描いたキラキラした東京と、今作で描かれた東京の闇は同じ世界の出来事、ということになってしまうからです。

ひええ……。

君の名はが光だとしたら、天気の子は闇そのもの。

すごい攻撃性を感じるんですけど……。

大衆向けに寄せていったかと思えば、そこで得たファンに伝えたいことを伝えたいままストレートにぶつけてくる。

ちょうど天気の子が公開されたのは、長い長い梅雨が続いていたタイミング。まるで、予期していたのかのようなピッタリさにも驚きでした。

今年は異例な梅雨でしたが、昨年は猛暑が話題になりましたよね。

毎年のように、夏が来れば酷暑が、冬が来れば大雪が続きますが、

観測史上初めてと報道される『異常気象』には、慣れましたか?

この世界の環境も、元々狂っていて、私たちもこの狂った世界で狂った価値観を構築していく。どうしてそこに「正しさ」や「正論」を持ち込む必要があるんだろう。

 

「世界は狂ったままでいいんじゃない?」

 

そんな、幼さを感じる問いかけに、あなたの価値観は、どんな違和感覚えましたか?