冷静と失禁のあいだ

夢日記と映画や本、美術展、エロゲの感想など。

思い出を"味わう"体験 『記憶の珍味 諏訪綾子展』

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選んだ『記憶のにおい』のチケット


資生堂ギャラリーで開催中の『記憶の珍味 諏訪綾子展』に行った。

bijutsutecho.com


展示室中央には椅子とテーブルが、そしてそれらを囲うように『記憶のにおい』が展示されていた。『におい』は8種類あり、果実のような甘い香りのものから、思わずうっと声が出る強烈な『におい』まで様々。

 

この展示で、『におい』を食べることは事前に知っていたので、初めは口にすることを前提で、果実のような香りの『におい』を選ぼうとしたが、時間もあったので、ひとつひとつ慎重に楽しみ、選んだ。

 

結果、『孤独と自由』という『におい』に辿り着いた。誰もいない深い森で、人目を気にせず深呼吸するような、不思議な心地よさがある『におい』だ。

 

その後、館内のスタッフの方に声をかけて、選んだ『におい』のチケットをいただき、待つこと40、50分ほど。一人ずつ『におい』を味わうため、10人しか並んでなくても、だいぶ待ちます。

自分の番になり、手を消毒して(今の時期、ここはとても重要!)、ヘッドフォンを装着、真っ暗な部屋に通される。ヘッドフォンからは人間の呼吸音のような音声と、部屋の中での指示が流れ、指示が来たら、暗い部屋の一か所で光る『におい』を口にして、味わう。傍から見たら、すごいシュールな絵面だ。ちなみに、食べる『におい』は、透明なグミでした。多分。先ほど選んだ『におい』が、口いっぱいに広がる。


果たして私は、この『におい』に結び付くような経験をしているのかしら……と色々思いを巡らせていたら、あっという間に終わりの合図が。もうちょっと時間頂戴!というのが正直な感想。

過去には、じっくり味わえる機会もあったようだ……。

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たとえば、友達と話している時に『思い出の味』というワードが、たまに現れる。

私たちは食べ物を口にすると、美味しい、不味い、好き、嫌い、と判断している訳だが、『思い出の味』は、必ずしも『美味しい』ものとは限らない。

何か嬉しかったり、辛いことがあったりした後に、たまたま口にしたものが、その記憶を思い出すきっかけとなる、なんてこともある。

他にも、思い出や記憶を振り返る時に、「苦い思いをした」と話すことがある。

 好きな人との「甘い」ひと時だとか、辛い思いをする……は「からい」ではないが、わたしたちは、経験を食べ物のように、実はひとつひとつ、味わっているのかもしれない。

今回の展示では、透明なグミが出てきた。『美味しい』や『不味い』の評価軸からかけ離れた見た目から入ることで、より思い出や記憶を味わいやすく配慮されていると感じた。

会話の中で、「~っぽい味」とか形容することはあれど、食べ物から思い出や記憶を想起する、といった体験なんて、殆どないので新鮮な体験だった。ついでに花椿の最新号とバックナンバーもいただき、ホクホクです。


出来れば、21世紀美術館でやっていたフルコースをまたやって欲しいなあ。
その時までには、この不思議な感覚にも慣れているはず……。